病気になった真の原因
「『症状は薬で抑え、腫瘤は摘出する』
これだけの医療では、治ったことにはならないのではないか」
高校生のころから、ずっと疑問に思っていました。
薬や手術でいったんよくなったように見えても、病気になった真の原因をとりのぞかない限り、また病気になってしまうのではないかと考えていたのです。
医学部に入学すると、各科の講義を受け、全身の病気について学びます。
しかし、わたしが知りたい「真の原因」について学ぶ機会はありませんでした。
全人的医療との出会い
そんななか、「全人的医療を考える会」の活動のなかで、同じ考えをもつ仲間に出会います。
全人的医療とは、病気を含めたその人全体をとらえる医療です。
現代医療に疑問を持っているのは、私だけではないことを知り、心強く感じ、ぜひこのような医療を実践できればと思いました。
しかしそのためには、どの科で、どのようなことを身につけるとよいのでしょう。
当時の私はどうしたらいいのかわからず、卒業後は、内科のローテーションから始めることにしました。
内科での限界
大学病院の内科をローテートするなか、衝撃的な事実に直面してしまいます。
今なら考えられないことかもしれませんが、当時は、女性医師に対する風当たりが非常に強く、技術を身に着けようとする女性には厳しい環境でした。
男性医師には多くの機会が与えられるのに対し、女性医師は排斥されるような場面も目にします。
次第に内科での将来性に限界を感じるようになり、専門性を身に着けようと放射線科に転科し、さらに大阪大学放射線科に変わりました。
全人的医療から離れてしまう
全人的医療はたいせつなことですが、その前に、まず西洋医学を身に着けなければなりません。
その思いで、頑張れば頑張るほど、日々の勤務に忙殺され、次第に、全人的医療どころではなくなり、いつしか西洋医学を追求する立場になっていました。
医学博士と専門医を取得したのち、これから何を目指すのかをふと考えたとき、あれほど求めていた全人的医療をどこかに放置してしまったことに気付き、愕然としてしまいます。
全人的医療を目指していたはずなのに、いったい私は何をしているのだろう。
臨床に、論文、学会とただただ一生懸命やってきて、なにも間違ったことなどなかったはずなのに、なぜ今、こんなに悩むことになってしまったのだろう。
これからいったいどうしたらいいのだろう。
このまま西洋医学を突き進めるのか、方向転換して全人的医療を目指すのか、非常に悩みました。
けれども、ずっとやりたいと思っていたことを、何もしないまま終わらせることはできません。
死ぬとき後悔するようなことはしたくありませんでした。
今からでも、できることを探そうと決心し、いろいろな方に相談し、本を読み、さまざまなセミナーに参加するうち、九州大学心療内科を紹介していただき、入局することになったのです。
九州大学心療内科から九州がんセンターへ
九州大学心療内科研修の後、九州がんセンター血液内科で勤務し、心療内科だけでなく、がん治療に携わり、さまざまな心理療法を身に着け、非常に濃い4年間を過ごすことができました。
問題は、その後、どのような方向に進んでいくかということです。
思い悩んでいるところに、大阪大学から「そろそろ戻ってこない?」という連絡をうけました。
最初は全く選択肢になかったことでしたが、よくよく考えてみると、これは大変ありがたい話に思えます。
なぜなら、私は大学出身者ではありませんし、若いとは言えない年齢の、しかも女性です。今ならあり得ない古い考え方ですが、その当時はそのように感じ、大阪に戻ってできることを見つけることにしました。
多忙な勤務の中、病気発覚
大阪大学にもどってきたころは、ちょうど医師不足が問題となっていた時期で、特に放射線専門医の不足は深刻でした。
毎日、深夜まで仕事に追われながら、学会活動や論文作成をこなす日々が続き、「私はいったい何をやっているのだろう」、「何のために九州まで行ったのか」と、再び悩むことになってしまいました。
そのような忙しい日々を送るうち、がんと診断されます。
入院、自宅療養を経て、人生を考えなおす絶好の機会を得たはずでした。
ところが、病気休暇の後、仕事に復帰し、再び以前と同様の、多忙な勤務医生活に戻ってしまいます。そして、数年後、別の病気が見つかることになるのです。
病気療養からクリニック開設へ
学生の頃は、「病気になった原因を見つけ、生活や思考を変えなければ、治ったことにはならない」と考えていたにもかかわらず、医者の私は自分の生活を変えることすらできず、再び病気になり、自分の考えを証明する結果になってしまいました。
病気になった原因とはなんでしょう。
病気になってまで、私の体が伝えようとしていることはなんなのでしょうか。
答えを求めて、様々な補完代替医療を体験し、心に響くものがあれば、さらにセミナーにも通うようになりました。
毎月、東京や横浜まで足を運び、さまざまな方にお会いするうち、統合医療、ホリスティック医学にたどり着いたのです。
そして、これがまさしく、私が探し求めていた医療だということがわかりました。
長い遠回りの末、やっと答えをみつけることができたのです。
そして、たくさんの人に統合医療という考え方や医療を知っていただきたいと、クリニックを開設することにしました。
西洋医学にさまざまな補完代替医療を組み合わせ、その方にあった適切な方法を提案する統合医療クリニックです。
クリニックでは、私自身が今まで体験した、さまざまな補完代替医療のなかから、わたしの心とからだ、魂に響いた治療法を扱っています。
病気になって気づく心の声
病気は私たちに何かを訴えようとしています。
それは、「本来の自分を見失ってはいませんか」、「自分の人生を生きていますか」という問いかけかもしれません。
クリニック千里の森は、ただ健康になるだけではなく、気づきを得て、ご自分らしく進んでいただけるよう、お手伝いできればと願っています。