30歳の女性、会社員の方が来院されました。
にこにこして、とても感じの良い、かわいらしい方です。
5年前から、うつ病で精神科に通院されているそうです。
最近は、かなりよくなってきて、薬も減量できているのですが、
最後の薬をなかなかやめることができません。
薬を完全にやめられるよう、なにかいいものはないかと探していたところ、
知人から、ホメオパシーのことを聞き、来院されました。
うつ病になったきっかけは、職場だと言います。
大学卒業後、入社した会社で、人事部に配属されました。
はじめは、一般事務全般を扱っていたのですが、
そのうち、退職される方の事務手続きを担当することが多くなりました。
しばらくして、自分の仕事内容に違和感を覚え、ひどい疲労感に悩まされるようになりました。
実は、退職者のほとんどは、リストラ退職者だったのです。
会社の経営状況が悪いことも、入社後、初めて知り、ショックを受けました。
「自分はリストラを助けているのではないか」
「入社数年目の自分が、勤続何十年という人の退職を助けるなんて…」
次第に、自分の仕事に罪悪感を感じるようになったと言います。
「辞めさせないといけない会社の事情も理解できます。
でも、退職させられる人の事情を考えると…。
私にはどうすることもできなくて、とてもつらかったです」
そのうち、大変信頼していた上司が突然退職してしまいます。
リストラによる退職だったと聞き、大変ショックを受け、それ以来、眠れない日が続きました。
勤務中、突然涙がこぼれ、仕事が手につかなくなり、精神科を受診します。
うつ病と診断され、治療を始め、同時期に会社も辞めました。
治療を初めて、徐々に体調も良くなり、眠れるようになりました。
会社から離れることができ、とても気持ちが楽になったと言います。
経過は良好で、薬もどんどん減量していったのですが、最後の薬をやめることができません。
「薬がないと不安になるからかもしれないし、
本当に薬がないとだめなのかもしれません。
でも、できれば、薬がなくても大丈夫になりたいんです」
お話をお聞きしていると、とても情愛の深い、優しい方です。
一方で、非常に繊細で、傷つきやすい心の持ち主です。
仕事に対する責任感が強く、お世話をする際の心遣いを忘れません。
彼女には、Natrum muriaticumを処方しました。
2か月後、
「ホメオパシーレメディを服用していると、なんとなく安心します。
自分は大丈夫という気持ちになります。
精神科の主治医の先生に、薬をやめられるように相談してみようと思います」
と話してくださいました。
精神科の薬も、ホメオパシーも両方続けながら、
あせらず減量していけるといいと思います。
※ご本人の了解をいただき、掲載させていただいています。
趣旨をゆがめない程度に、年齢や性別などの背景を変えたり、
他の患者さんを組み合わせるなどして、実際の症例に変更を加えています。
また、理解しやすいよう、内容を単純にし、処方内容も一部に限定していることをご了承ください。
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