新卒で入社した会社の業務に困難を感じ、パニック障害、抑うつ状態で受診された方に、バッチフラワーレメディを用いた経過を紹介します。
その後、会社を退職され、異業種に転職し、週末は大好きな絵を学びたいと、学校に通い始めます。
やがて、絵に専念するため、会社退職を決意されるまでの経緯をお話しています。
好きなことは、不安を取り除き、自信を回復させ、未来をも変える可能性があることを教えてくれた症例です。
毎日、会社に行くのが辛くてたまらない
奈保子さんは、IT企業にお勤めの23歳の女性です。
就職して一か月もたたないうちに、この会社で勤務を続けるのは無理だと思うようになりました。
業務内容が難しくて、理解できないのです。
毎日、必死で本を読み、調べながら仕事しているのですが、肝心なことは書かれていなくて、結局、何もわからないまま、時間だけが過ぎていきます。
先輩に質問したくても、何をどう尋ねたらいいのかもわかりません。
なんとか質問事項をまとめて聞きに行っても、先輩が何を話しているのか全く理解できません。
せっかく先輩が時間を取って教えてくれているのに、全く理解できない自分が情けなくて、さらに悲しくなってしまうのです。
先輩たちは、「最初は難しくてわからないと思うけど、焦らなくていいから」と言ってくれます。
でも、そう言われれば、言われるほど、本当に自分はだめだと思ってしまいます。
「会社の人たちは、みんなほんとうにいい方ばかりなんです。
なにもできない自分のことを責めたりする人はひとりもいません。
こんないい会社を辞めたいと思う自分は、本当にだめだって思うんです」
パニック障害からさらにうつ状態に
「最近は、何か仕事をしようとすると、心臓がどきどきするようになりました。
時には、吐き気がしたり、急に胃が痛くなったりします。
突然、涙があふれてきて、トイレに駆け込んで泣き続けてしまったこともあります」
「就職活動中は、何十社も受けて、やっとつかんだ仕事です。
そんなに簡単に辞めてしまっていいのかという気持ちもあります。
どんなに辛くても、せめて一年は頑張ろうと心に決めたのに…、最近は気持ちさえついて行かなくなりました」
「朝、起きられなくなってしまったんです。
なんとか家を出ても、電車の中で気分が悪くなったりします。
会社の最寄り駅に着いたら、急に涙が止まらなくなってしまったこともありました。
会社に行くのがほんとうにつらくてつらくてたまりません」
あふれる涙を押さえながら、毎日がとてもつらくて、どうしたらいいのかわからないとおっしゃいます。
バッチフラワーレメディの提案
バッチフラワーを希望されましたので、まず、ゲンチアナをお出ししました。
ゲンチアナは、物事がうまくいかなかったり、困難に直面して、自分に対する自信や信頼を失い、落ち込んでしまう人のためのレメディです。
ゲンチアナを飲んで自信を取り戻すことで、自力で問題を解決できると確信することができるでしょう。
また、不安でいっぱいなところには、ミムラスが必要です。
毎朝、会社に行くとき、気分が悪くなってしまうほど不安になる。
仕事をしようとすると、不安でどきどきする。
帰宅後も、会社のことを考えると、不安でいっぱいになる。
このようなたくさんの不安な気持ちに対応します。
ミムラスは、「こんなことが心配」、「このようなことで不安になる」といった、原因のはっきりした不安に働きかけます。
仕事を終えて帰宅してからも、仕事のことをずっと考えてしまうところには、ホワイトチェストナットが必要です。
ずっと考えることで、よい解決法が見つかればよいのですが、解決法は見つからないどころか、不安や心配事が次から次へと湧き起こり、頭の中で堂々巡りをしてしまっています。
その結果、気持ちを切り替えることもできず、追い詰められてしまいました。
ホワイトチェストナットは、頭の中の堂々巡りを止め、心の乱れを整えます。
重要なことと、そうでないことを分け、自身の考えを整理できるようになると、建設的な解決策を見つけられるようになります。
3週間後再診:会社を退職します
3週間後、表情がとてもやわらかく明るくなり、初診時とはまるで別人のようです。
バッチフラワーを飲んで気持ちがとても楽になったと言われます。
初診の翌週、思い切って、上司に相談されたそうです。
会社をしばらくお休みして、ゆっくり考えた結果、会社を辞めて、新たな仕事を探すことに決めました。
もうすでに、ハローワークにも足を運んでいるそうで、思いは未来に向かっていました。
転職してもまた、不安でたまらない
IT企業を退職した奈保子さんは、半年後、不動産会社に転職しました。
比較的新しい小さな会社で、このところ仕事の依頼が急に増えたため、会社の人手不足は深刻です。
奈保子さんは新入社員ですが、教育担当はいないので、いろいろな人に尋ねながら、自分ひとりでなんとか仕事していかなくてはいけません。
そんななか、安全祈願祭の担当になりました。
関連会社や銀行の担当者にも来ていただくように、それぞれに案内状を郵送したり、当日必要な物品を依頼するなど、準備を進めています。
けれども、奈保子さんは不安で不安でたまりません。
案内状は出したけど、返信に間に合うように、担当者の手元に届かなかったらどうしよう?
みんな来てくれるのだろうか?来てくれなかったら、上司に怒られる…。
祭りに必要なお酒を頼んだけど、当日になって届かなかったらどうしよう?
などなど、心配で心配で、生きた心地もしません。
どんなにベストを尽くしても、満足のいく結果が出せないような気がしてしまうのです。
今月は、安全祈願祭が続き、ひと月に3件も行なわれます。
うまくいかなかったらどうしようと思うと、休みの日も気が休まりません。
奈保子さんおひとりで、会社の全責任を負っているかのように、耐えがたいほどの重圧を感じておられます
このような、責任の重さに押しつぶされそうな時は、エルムが必要です。
再び自信を取り戻し、無理なく仕事をやり遂げられるよう、助けてくれます。
また、仕事を100パーセント完璧にやらなくてはいけないと感じているところには、ロックウォーターを提案しました。
ロックウォーターは、心の余裕と、柔軟な考え方をもたらします。
新しい会社に入社して、慣れないことばかりが続いており、ウォルナットが必要かもしれません。
ウォルナットは、就職などの環境変化に無理なく対応できるよう助けます。
そのほか、不安でたまらないところには、ミムラスを、また、仕事を離れても、いつも仕事のことを考えてしまうところには、ホワイトチェストナットも必要です。
バッチフラワーレメディをお出しして、3週間後です。
「落ち着いてきました。
大丈夫だって思えるようになりました」
それからは、数か月に一回程度、来院されるようになりました。
「時々、自信がなくなって落ち込むことがあって…」
そういう時は話を聞いてほしいと思うのだそうです。
そして、しばらく、いらっしゃらない期間が続き、最終診察日から一年後、久しぶりに来院されました。
退職して絵の学校に専念する
奈保子さんは、髪を切って、さっぱりとしたショートカットで現れました。
真っ黒な瞳が、しっかりと私の目をとらえ、以前にはみられなかった自信や意志を感じます。
「3月末で今の会社を退職しようと思っています。
これはもう決めたことなので…」
私は驚いてしまいました。
開口一番、以前とは全く異なる奈保子さんです。
すでに決意は固く、退職についての相談ではありませんでした。
「会社を辞めて、今通っている学校でもっとたくさん授業を受けようと思っているんです。
私、絵がうまくなりたいんです」
絵を描くのが好き
それは、2年前のことでした。
診察中、「何をするのが好きなの?」と尋ねますと、
「絵を描くのが好きです。
絵の学校に行きたくて、お金を貯めている」
と言われます。
「お金を貯めて学校に行く、というのはとても立派な姿勢ですよね。
でも、気持ちが向いているときに始めるのが一番いいんですよ」
と話しました。
何でも、気持ちが乗っているときに始める方がいいのです。
ようやくお金がたまったときには、気持ちが変わっているかもしれません。
絵の学校の状況も変わっているかもしれないし、奈保子さんの身辺も変わり、学校に行ける状態ではないかもしれません。
この先、何が起こるかわからないのです。
「学校に行って学びたい!」
そう思ったときに始めるのが一番です。
また、大好きな絵を描くことは、よい気分転換となり、不安におしつぶれそうな奈保子さんの心境に変化をもたらすでしょう。
治療のためにも、気持ちが盛り上がっているときに始めることを勧めました。
その後すぐに、両親からお金を借りて絵の学校に入り、会社勤務しながら、毎週末、学校に通うようになりました。
絵がうまくなりたい
「将来、絵でお金を稼ぐのは難しいということはわかっています。
でも、お金を稼ぐためだけでなく、とにかく、もっと絵がうまくなりたいんです」
週末だけ学校に行くのではなく、もっとたくさん授業を受けて、もっと絵を描きたい、もっとうまくなりたいと思うようになり、退職を決意したのだそうです。
「両親に借りたお金は返せたし、貯金も少しはできたので、これで学校に行こうと思っています。
でもまた、別の仕事を探すつもりです。
今後の不安がないわけではないけど…」
そこには、以前のような、不安で仕方なかった奈保子さんはもういません。
不安はあるけど、自分の思うようにやっていこうと決めたのです。
絵の学校に通い、大好きな絵をたくさん描くことで、徐々に自信を取り戻されたように感じました。
好きなことは、その人を支えるだけでなく、未来をも変える可能性があると感じました。
※ご本人の了解をいただき、掲載させていただいています。
趣旨をゆがめない程度に、年齢や性別などの背景を変えたり、
他の患者さんを組み合わせるなどして、実際の症例に変更を加えています。
また、理解しやすいよう、内容を単純にし、処方内容も一部に限定していることをご了承ください。
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