前回、流産の後、まわりから掛けられる言葉に対応するのがつらいという綾子さんの経過を紹介しました。
一か月後、診察を希望され来院されたのですが、モラルハラスメントと思われる内容だったのです。
同じ悩みをお持ちの方がいらっしゃるかもしれないと思い、一部、紹介することにいたしました。
妻の粗探しをする
「先生、わたし、主人にイライラするんです。
家で一緒にいるのが耐えられません。
主人のすること、なすこと、怒りがこみあげます」
「私が掃除した後、粗探しするんです。
『あれができてない、これがなってない』とかって、文句を言ってくるんです。
私は全然気にならないし、気になるなら自分がすればって言うんですよ。
でも、『自分は会社で疲れた』とか言って、帰宅したらずっと寝てるんです。
他人のことはすぐにこき下ろすのに、自分には甘いんです。
会社のことでも、『あいつはだめだ、こいつもなってない』とか言って、いつも文句を言っています。
この前なんか、仕事で頭にくることがあったらしくて、帰ってくるなり、壁を殴りつけたんですよ。
そしたら、壁に穴が開いちゃったんです。
もう…、なにやってんだか…。
つい最近、業者に頼んで修理してもらったところです。
余計な出費になってしまって…、まだまだローン続くのに、家を壊さんでよって言いたいです。
それに、気分屋で、気分がころころ変わるんです。
『出かけよう』って言うから、外出する準備をするじゃないですか。
それで、準備を整えて出かけようとすると、
『もう出かける気分じゃなくなった。おれは家にいる。おまえが遅いからこんなことになる。おまえのせいだ』って言うんですよ。
もう!ほんとに!主人には失望しています」
妻を監視、束縛する
「仕事から帰ってくると、
『自分が家にいない間、おまえは何をしてた?』
って聞いてきます。
『自分は会社で仕事をしているのに、おまえは掃除すらできていないじゃないか』
とか言うんですよ。
それで、はいはい、わかりましたって、適当に掃除し直します。
掃除しとくと落ち着くみたいなので。
それに、料理を作っても、気に入らないと全く食べなかったりするんです。
以前は、口に合わないのかなって気にしたりしてたけど、今は、食べないなら食べないでいいよって放っています。
それだけじゃありません。
気に障ると、まったく口を利かなくなったりするんです。
何日も…。
以前は気にしたりしたけど、今は、また始まったと思ってます」
これは間違いなく、モラルハラスメントです。
モラルハラスメント夫は自分の思う通りに妻を動かそうと、妻の行動を監視し束縛しようとします。
よい妻になってほしくて文句をいうのではなく、文句を言いたくて言うだけですから、妻がどんなに頑張ろうと状況は変わりません。
掃除をしていないと「だらしがない」と言い、掃除をすると、「掃除の仕方がいい加減だ」と文句を言います。
なにか言ってきても、受け流すような態度がいいのです。
顔色をうかがうようなことはしてはいけません。
その点、綾子さんは、さらっと受け流す言動をしていて、うまく対応されています。
自分は常に正しい
妻にはありとあらゆる点で文句を言いますが、自分自身は常に正しいと思っていて、誰にも文句を言わせません。
自分に不都合なことがあると人のせいにします。
自分はあくまでも正しく、こんなことになったのは、ほかの人が原因です。
自分は優秀だけど、回りがばかだから、自分の優秀さに気づかないと思っているのです。
「私が出かけようとすると、
『どこに行くのか、誰と会うのか、何時に帰るのか』とか、しつこく聞いてきます。
それでどこに行くのかを説明すると、『そんなことやめとけ、そんな奴と会うな』とかって言うんです。
ここに来てすごくよかった話をしたら、
『お前はおめでたい。そんなわけのわからないものに手を出して。お前はばかだ。だまされていることもわからないのか』
とかもう、いろいろひどいことを言われるので、今日はだまって出てきました」
モラルハラスメント夫は、自分の見ていない場所で、妻が他人と一緒にいるのが許せないのです。
モラルハラスメント夫に対処する
このようなモラルハラスメント夫と常に一緒にいると疲れ切ってしまいます。
できるだけ影響を受けないように気を付ける必要があります。
「はい、私、できるだけ、一人で過ごすようにしています。
一人でスーパーに買い物に行くとか、犬の散歩に行くとかですね。
それが、出ていこうとすると、『どこに行く?』って聞いてくるんです。
買い物行くって言うと、ついてこようとするんですよ。
もう、ついてこなくていいって思います。
そういう時は、スーパーでも、できるだけ離れて買い物します。
それに、主人のいないところで楽しむようにしています。
私、走るのが好きなので、イライラしたらジョギングします」
できるだけ距離をとるようにして、自分だけの時間を持ち、自分だけの空間を作ることも重要です。
ジョギングするのはとてもいいですね。
モラルハラスメント夫からの暴言をずっと受けていると、
「自分がちゃんとできないから、主人が怒ってしまうのだ。何もかも自分が悪いのだ」
と、自分を責めるようになってしまいます。
そうなると、心身ともに不調に陥るのは目に見えています。
人格否定され、精神的支配下の状態に長期間置かれると、自己肯定感は傷つき、取り戻すにはかなりの時間がかかります。
そうなる前に、厳しいようですが、別居や離婚といったことも最終的にはあるかもしれないと考えておく必要はあるかもしれません。
「はい、実は、離婚を考えたことは何度もあります。
でも…、波長の合うときは、共通の趣味もあって、楽しく過ごせる日もあるんです。
主人は私よりも10歳年上なので、体力的に厳しいところもあるのかなとも思います」
10歳年上であれば、年上らしい態度で接してほしいところです。
ひどいことを言われたときは、そんなことを言われて傷ついたということを伝えることは重要です。
ご主人は、綾子さんがどのように感じているのか、全くわかっていないのかもしれません。
ご主人のことを相談できる友人や、ご家族はいらっしゃるのですか?
「友人に話すと、夫ってそういうものって言われます。
それに、あんまり、個人的なことを友人に話しにくくて…。
というのも、主人とは社内結婚なので、知人友人がみんな会社の人だったりするんです。
話しにくいですよね。
私の両親は、主人のこと、変な人だと思っています。
私に気を付けた方がいいって言うので、あんまり心配させるようなこと話したらだめかなと思ったりします」
どんなときでもご両親など周りの方に気を使っておられます。
アグリモニーとセントーリーは必要かと思います。
ご主人に対していらいらしたり、怒りを感じておられますので、バッチフラワーレメディのインパチエンスとホリーも選びます。
レメディを選ぶことも大切ですが、ご主人の言動が綾子さんの心身によくない影響を与えているのは明確です。
ご自身を守る、自分を大切にする気持ちで過ごしていただくようお話ししました。
結婚して二人で住んでいるのに、できるだけ距離をとるように勧めるのってなんだか変ですし、心苦しいところではあるのですが、とても重要なことなので心にとめておいてください。
3週間後来院され、
「バッチフラワーをとるとスーっと怒りが収まって、気持ちが落ち着きます。
イライラしなくなったと思います。
飲むのを忘れると、怒りがこみ上げてくるので、忘れず飲むようにしています」
と話されました。
綾子さんのお話はさらに次回に続きます。
※前回「流産の後、まわりからのひと言がつらい」、本記事「モラルハラスメント夫」、次回「死産を乗り越えて」は、「主人にイライラするんです」と「妊娠中のバッチフラワーレメディ」をもとにして、大幅に加筆修正を加えまとめたものです。
※関連記事です。
流産の後、まわりからのひと言がつらい
モラルハラスメント夫
死産を乗り越えて
死産後、夫がうつ病に
死産を経験した私だからこそできること
※ご本人の了解をいただき、掲載させていただいています。
趣旨をゆがめない程度に、年齢や性別などの背景を変えたり、
他の患者さんを組み合わせるなどして、実際の症例に変更を加えています。
また、理解しやすいよう、内容を単純にし、処方内容も一部に限定していることをご了承ください。
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