「泣いたり、怒ったりするなど、感情を表にだすことはよくない」と思っておられる方は少なくありません。
その多くは、親から「泣くな」「怒るな」と言われており、感情を出すことはいけないことだとしつけられてきたのです。
今回は、感情を感じないようにしてきたことが、症状の悪化に関連していたというお話です。
関節リウマチの治療に行き詰る
41歳、会社員の女性です。
25歳のとき、関節リウマチと診断され、さまざまな治療薬を試してきましたが、どの薬も副作用のため使い続けることができません。
最初の薬では発熱が続き、別の薬では全身に皮疹が広がり入院になりました。
主治医からも「薬が使いにくい」といわれ、治療に行き詰っています。
薬以外に治療法はないものかとずっと探していて、クリニック千里の森を見つけてくださったのだそうです。
リウマチ発症当時は、ひどいストレス状態だった
リウマチを発症したころのことを尋ねますと、
「会社の上司からパワハラを受け、同僚からはいじめにあっていた」
など、ひどいストレス状態だったといいます。
私はそのあまりにつらい内容に胸が苦しくなったのですが、彼女は表情ひとつ変えず淡々と話されます。
感情を出さないようにしているのでしょうか。
それとも、つらい話なので、感情を押し殺さないと話すことができないのでしょうか。
ひと通り話し終わったところで、尋ねてみますと、両親から「あなたは感情を出しすぎだから、感情を抑えなさい」と注意されてきたのだそうです。
そのため、「腹立たしいことに対して怒るのはよくないことで、ましてや、怒りを表に出すなんて決してしてはいけないこと」そう思っていたそうです。
社会生活上、感情をそのまま表出することは、たしかにあまりよいことではないかもしれません。
けれども、常に感情を抑えていると、悲しみや苦しみを感じなくなるだけでなく、うれしいこと、楽しいことまでわからなくなってしまいます。
自分が何をどう感じているのかわからなくなると、自分が何を選択したいのかわからなくなり、自分の進むべき道も見えなくなります。
また、感情を抑えること、特に怒りの感情を抑えることは、関節に何らかのよくない影響を及ぼすとの意見も見られ、治療の妨げとなる可能性もあります。
今、感じている自分の気持ちを認める
感情を抑えることがよくないのなら、どうするといいでしょう。
それは、むやみやたらと怒るとか、感情をあらわにするということではありません。
自分が今、感じている感情を否定しないで、「自分は今、怒っているな」と自分の感情を認めるのです。
彼女は、しきりにうなずきながら聞いておられました。
あなたが変わると、周りも変わる
3週間後の再診です。
「私、いままで怒りを我慢してたんだなってことがよくわかりました。
だれに対しても、言いたいことを言ってこなかったんです。
ひどい目にあったときに、ひどいっていわなくてはいけないのに、我慢してしまうんです。
すると、抗議する機会を逃してしまって、そのままになってしまうんですね。
前回の診察のあと、言いたいことを言うようにしました。
そしたら、周りの人の態度が変わりました。
口調も柔らかくなったと思います。
『何々してもいいですか?』とか、『何々してもらえる?』とか、私に許可を求めてくるようになったんです。
以前は、『あなたが何々すべき』と、勝手に決められ、命令されるばかりでした。
それが今は、私の意見を聞いてくれるようになったんです。
そうしたら、私はとても楽になりました。
気持ちが楽になって、痛みも軽くなって、体調も良くなってきたと思います」
彼女が変わったことで、周りの反応が変わりました。
そして、周囲が変わったので、さらに彼女自身も変化しています。
このように彼女が変わり、彼女を取り巻く環境も変わっていくと、よりいっそう気持ちが楽になり、症状も今までとは変わってくるでしょう。
※ご本人の了解をいただき、掲載させていただいています。
趣旨をゆがめない程度に、年齢や性別などの背景を変えたり、
他の患者さんを組み合わせるなどして、実際の症例に変更を加えています。
また、理解しやすいよう、内容を単純にし、処方内容も一部に限定していることをご了承ください。
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