私は子供のころ、毎日、死にたいと思っていました。
親から毎日のように怒られ、ひどい言葉をかけられ、家の中は地獄のようでした。
親にすら理解してもらえないのですから、世界中のだれからも理解されない気がします。
暗くて広い宇宙のなかで、ひとりぼっちだと感じていました。
「生きてるといいことあるよ」
ある日、どうしようもなく、胸のつぶれるような出来事があり、
いよいよ、どうやって死のうかと真剣に考え始めます。
こういう方法だと痛いのかな?
ほかに方法があるかなぁ、
思いつかない…。
暗く、うつうつと考えていると…、突然、
(生きてるといいことあるよ)
っていう声が聞こえたんです。
どこから聞こえたのか、わかりません。
誰の声なのかもわかりません。
でも、なんだか暖かい、その声を聞き、死ぬ方法を考えることをやめました。
そして、なんだかほっとしたのを覚えています。
こどものころ聞いたのはだれの声?
その後、医学部に入り、卒業して医師になります。
大学医局を変わって数年後、専門医をとり、学位をとり、なんだかほっとしたときふと、
(そういえば、こどものころ、毎日死にたいと思っていたけど、生きてるといいこともあるね)
って思ったんですね。
(あれ?あのときの声と同じこと言ってる…。
生きてるといいことあるって
あれは、自分の声だったのかな?)
でも、どう考えても、そんなことあるわけないですよね。
声のことはよくわからないまま、さらに月日が流れました。
将来の自分が、現在の自分を助けてくれる
その後、私は、九州大学に移り、再び大阪に戻り、病気を患い、常勤をやめます。
そして、さまざまな補完代替医療を学び始めました。
催眠療法のセミナーに参加したときのことです。
そのソマティック療法のセミナーには、元女優の宮崎ますみさんも出席されていました。
宮崎ますみさんは、その時点ですでに長年、催眠療法士として活躍されていて、講師側のテーブルにすわっておられました。
セミナーのはじめに、みんなが簡単な自己紹介をすることになり、
宮崎ますみさんは、ある映画撮影のときの体験談を話されたのです。
「その映画の撮影で、私は、精神的にとても追い込まれていて、すごく苦しい思いをしていました。
こんな状態がいつまで続くんだろう。
私は、最後まで頑張れるのだろうか。
映画はほんとうに完成するのだろうか。
さまざまな不安や恐れが渦巻いていました。
そんなある夜、宿泊先の窓を開け、夜空を見上げていると、
『だいじょうぶ、うまくいくよ』
って言う声が聞こえました。
『映画は成功するから、心配しなくてだいじょうぶだよ』
その声と同時に、たくさんの人が映画を見てくれている場面が思い浮かびました。
そのことがあって、私は、最後までがんばって撮影をやり通すことができたんです。
そのときの声は、自分の声だってことが、私はわかっていました」
宮崎ますみさんの話を聞いて、私は、心が震えました!
そして、確信したんですね。
あっ、やっぱり、あの声はわたしの声だったんだ。
(生きてるといいことあるよ)
大人の自分の思いが、悩み苦しんでいた子供時代の自分に届いていたんだ。
パラレルワールドって、こういうことなんだね。
何のことかわからなかったけど、パラレルワールドってほんとうにあるんだ!
それまで、何のことはさっぱりわからなかった時間の観念も、パラレルワールドも、このとき、始めて理解することができました。
幼少時退行催眠
幼少時退行催眠では、おとなの自分が、幼い自分のそばに寄り添い、慰め、元気づけてあげる場面があります。
ときには、幼い自分にかわって問題を解決するべく、幼い自分にひどいことをするおとなと対峙することもあります。
私は、この自身の経験から、
催眠下でのその行為が、どれほど深い意味のあることなのか、よく理解することができました。
大人の自分が、幼い自分を慰め、怖い大人から守ってあげる。
なんだか、催眠状態でないとできない、特別なことのように思われるかもしれません。
でも実は、催眠状態でなくても、毎日の生活のなかでできることなんです。
その方法はとても簡単。
幼い自分に、「大丈夫だよ、うまくいくよ」って話しかけるだけでいいんです。
そうすると、幼い自分は安心するんですね。
幼い自分が安心して落ち着くと、それがまわりまわって、おとなの自分も元気になるんです。
幼い自分に声をかけるとしたら、あなたはなんと声をかけてあげますか。
なんと、声をかけてあげたいでしょう。
幼いころ、とてもつらい思いをされている方は、ぜひ、小さな自分に、声をかけてみてください。
そうすると、小さな自分がどんなようすなのか、感じてみてください。
きっと、今の自分も落ち着いてくるのを感じるはずです。
※ご本人の了解をいただき、掲載させていただいています。
趣旨をゆがめない程度に、年齢や性別などの背景を変えたり、
他の患者さんを組み合わせるなどして、実際の症例に変更を加えています。
また、理解しやすいよう、内容を単純にし、処方内容も一部に限定していることをご了承ください。
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