低血糖では、からだを動かすためのエネルギーが少ないため、からだはだるくて疲れています。
そのほかにも、「朝起きられない」「寝ても、寝ても疲れがとれない」と感じているかもしれません。
さらには、「頭が働かない」「物忘れが多い」「些細なことにイライラする」
「強い不安感」「パニック発作」などの症状もみられます。
このような、さまざま症状をもたらす低血糖とは何なのでしょうか。
詳しく解説していきます。
低血糖=エネルギーが少ない
血糖とは、血液中のブドウ糖、グルコースの濃度ですから、低血糖とは、血液中のグルコース濃度が低い状態を指します。
グルコースは、からだのなかでエネルギーになります。
つまり、グルコースはからだを動かすためのエネルギーです。
血糖が低いということは、エネルギーが少ないということですから、「だるくて、しんどくて、疲れを感じる」わけです。
血糖値の正常は70から139mg/dlとされていますが、90くらいはあったほうがいいと思います。
もしも、血糖が70 mg/dl以下だったら明らかに低いです。
一見健康で元気そうな方が、血液検査で血糖が50だったりしてびっくりすることがありますが、ご本人に自覚はなくてもりっぱな低血糖です。
低血糖だと、どうなるの?
低血糖なのかどうかは、どのようなところからわかるのでしょう?
低血糖状態では、エネルギーをつくることができないので、からだはだるくて疲れています。
「寝ても、寝ても疲れがとれない」と感じているかもしれません。
また、エネルギーは体温維持にも使われていますので、エネルギー不足は体温低下をもたらし、さらに寒さや冷えを感じやすくなります。
筋肉を動かすためには、糖が必要です。
低血糖では筋肉を動かすことができませんので、立っているのもつらく、座りたくなるでしょう。
椅子に座っても姿勢を保つのもつらいので、肘をついて体を支えたりしてしまいます。
もしあなたが、朝、苦手でなかなか起き上がることができず、いつまでも寝ていたくて、二度寝してしまうとしたら、それは低血糖が原因かもしれません。
朝、起床時に低血糖だと、寝ている状態から、体を起こすのは、エネルギー不足の筋肉にとって、とても大変な作業になるためです。
血糖値を保つシステム
コルチゾール
食事をすると血糖値は上昇しますが、食後2時間くらいで元の値に戻ってしまいます。
次の食事まで数時間ありますが、血糖値はこのまま下がっていくのでしょうか。
実は、からだには血糖値を保つ仕組みが備わっています。
そのひとつが副腎皮質から分泌されるコルチゾールです。
血糖が下がったことを感知すると、コルチゾールが分泌され、肝臓に指令をだします。
すると肝臓に蓄えていたグリコーゲンを分解して、糖であるグルコースをつくりだし、血糖値を保つのです。
しかし、もし肝臓にグリコーゲンを貯めていない場合はどうなるのでしょう。
この場合は、血糖値はどんどん下がってしまいます。
これが低血糖です。
疲れやすい人は、肝臓にグリコーゲンを十分貯蓄できていないため、血糖値が下がるたびにコルチゾールが分泌され、1日に何度もコルチゾールが消費されてしまいます。
このようなことが毎日続くと、副腎は疲れてしまいます。
さらに、コルチゾールはストレスに対抗するホルモンでもあります。
もしも会社や家でストレスを感じていれば、そのたびにコルチゾールを分泌し消費しています。
毎日、ストレスや低血糖のたびにコルチゾールが消費されれば、副腎は疲れ切ってしまい、「もうコルチゾールをつくれないよ」といって弱ってしまいます。
こうなると、さらに血糖コントロールは難しくなります。
そのうえ、元気のもとであるコルチゾールが不足することで、いつも疲れて、気分もすぐれない副腎疲労になってしまうのです。
アドレナリン、ノルアドレナリン
コルチゾールを分泌しても、血糖を上げることができない場合は、どうなるのでしょう。
低血糖とは、からだにとって、死ぬかもしれない緊急事態です。
この危険な状況を何とかするため、副腎髄質からアドレナリン、ノルアドレナリンが分泌され、血糖を上昇させようと働きます。
すると血糖は上昇しますが、困ったことも起こります。
ノルアドレナリンは神経伝達物質としても働くため、不安、怒り、恐怖などの作用をもたらし、不安感やイライラを感じやすくなるのです。
頭が働かない、強い不安感
からだの中でもっとも糖を必要としているのは脳です。
そのため血糖が低くなると、まず脳機能が影響を受け、「頭が働かない」「眠くなる」「集中できない」「思考力が低下する」「物忘れが多い」「やる気がおきない」など多彩な症状があらわれます。
また感情面にも影響し、「些細なことにイライラする」「強い不安感」「パニック発作」「抑うつ傾向」「死にたくなる」など、情緒不安定さが目立つこともあります。
低血糖になると、からだは糖分を欲しますから、異常に甘いものが食べたくなります。
ここで糖分を一気にとると、急激に血糖値が上昇し、今度はそれを下げようとインシュリンが分泌され、血糖は急降下し、ふたたび低血糖に陥ってしまいます。
このように血糖値が急上昇、急降下するとき、感情は不安定になり、さらに不安感や抑うつを感じやすくなります。
「不安でたまらない」「死にたくなる」「イライラする」など、人によって症状はさまざまです。
ところが、血糖コントロールがうまくいくようになると、感情の浮き沈みはなくなり、心穏やかになります。
低血糖対策だけで、パニック発作がなくなるのはこのためなのです。
飲酒後の低血糖
脳と筋肉が働くには、糖が必要と話しました。
糖を多く必要とするもうひとつの臓器、それは肝臓です。
肝臓は解毒を行っていますが、低血糖になると解毒がうまく進みません。
低血糖で不調の方のなかには、「百貨店の化粧品売り場や、香水が苦手で、気持ちが悪くなる」といわれる方がいらっしゃいます。
このような芳香剤や香りに敏感な方は、低血糖のために、肝臓の解毒機能が低下しているのかもしれません。
苦手な香りを避けることのほかに、低血糖対策をとっていただくといいと思います。
さらに、低血糖の人が注意してほしいのはお酒です。
飲酒後はアルコールを肝臓で解毒するため、肝臓は大忙しです。
そのため、血糖をキープする仕事がおろそかになってしまい、飲酒後は低血糖になりやすいのです。
お酒の後にスイーツやラーメンを食べたくなるのは、このためではないかといわれています。
不調の方は、お酒を控えていただくほうがいいですし、飲酒後の低血糖にも注意が必要です。
低血糖によるさまざまな症状
このように、低血糖はさまざまな臓器に影響を及ぼし、多種多様な症状があらわれます。
疲れやすい、からだがだるい、元気がない、慢性疲労
めまい、ふらつき、立ちくらみ、低血圧、眠気、
吐き気、気持ちが悪い、食欲がない、過食、
動悸、呼吸が浅い、胸が苦しい、
頭痛、肩こり、 発汗、手足の冷え
些細な音をうるさく感じる、耳の閉塞感、
集中力低下、思考力低下、物忘れがひどい、
うつ症状、 不安感が強い、やる気がおきない、
情緒不安定、強迫観念、被害妄想、イライラ
死にたくなる、自分はダメだと思ってしまう。
このなかに、思い当たる点があったあなたは低血糖かもしれません。
低血糖の人はどのように治していくとよいのか、次回、お話ししていきます。
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