歯科検診を受けた際、歯医者さんから「歯ぎしりしていませんか?」と尋ねられたことはありませんか。
歯ぎしりや食いしばりで力がかかり続けると、歯の根元にくさび状の欠けが生じます。
これは歯のキツ状欠損と呼ばれ、以前は、力を入れて歯磨きしているためと考えられていました。
しかし、最近では、歯ぎしりや食いしばりがおもな原因と言われています。
実は、「歯のキツ状欠損」や「歯ぎしり」「食いしばり」は、低血糖症と深い関係があることをご存知でしょうか。
顎関節症の原因にも
歯のくさび状欠損とは、歯と歯茎の境目(歯頚部)の歯質が、くさび状にえぐられたような欠損が生じている状態のことです。
噛む力は歯の根元に集中します。
非常に大きな力が加わると、歯の根元が摩耗してしまうのです。
歯にくさび状欠損ができると、痛みを感じたり、冷たいものがしみる場合もありますが、まったく気づかない場合も多く、歯科検診で指摘されてはじめて気付く場合も少なくありません。
くさび状欠損が進行すると、冷たいものなどがしみる知覚過敏をひきおこすことがあります。
欠損部分に歯垢(プラーク)がたまり、むし歯や歯周病になりやすく、さらに進行すると、歯の神経が露出してしまう場合もあります。
歯だけでなくあごにも強い力がかかるため、顎関節症を誘発する原因にもなりえます。
歯ぎしりすると、歯に強い力がかかってしまう
睡眠中だけでなく、日中であっても、仕事やゲームに集中しているときなどに、無意識に食いしばりをしていると、歯に強い力が加わり続けます。
食事などで意識的に噛んでいる際の歯ぎしりは、自分の体重ほどの力ですが、無意識な歯ぎしりの力はすざましく、人によっては1トン以上の力がかかっているといわれています。
歯ぎしり、食いしばりは、歯に大きな負担になっているのです。
歯ぎしりの治療
睡眠中の歯ぎしりがある場合には、歯科医院でご自身の歯に合ったオーダーメイドのマウスピースを作製していただくとよいでしょう。
寝る前に装着することで、マウスピースが歯ぎしりから歯を守ってくれます。
歯ぎしりが原因でマウスピースを作成する場合は保険適用となりますので、2,500~5,000円ほどで作成することができます。
歯並びや噛み合わせが原因の場合は、歯科矯正が必要となることもありますので、歯科を受診していただくことをお勧めします。
睡眠中の歯ぎしりには、夜間低血糖の対策を
睡眠中の歯ぎしりに対して、マウスピースをおすすめしましたが、歯ぎしりしてしまう原因を解消しなければ、歯のくさび状欠損の再発、多発を食い止めることはできません。
睡眠中に歯ぎしり、食いしばりをしてしまう原因として、夜間低血糖が考えられます。
寝ている間に低血糖になっていたとしても、寝ているため、ご自身は低血糖状態に気づくことはないでしょう。
けれどもからだは、低血糖状態を認識して、睡眠中も懸命に対応してくれています。
低血糖は、からだにとっては死ぬかもしれない緊急事態です。
血糖を上昇しようと、アドレナリン、ノルアドレナリンを分泌して、対応しようとします。
アドレナリン、ノルアドレナリンが分泌されると、低血糖は解消されますが、交感神経優位となるため、体に力が入ります。
肩や首に力が入れば、睡眠中に肩こり、首コリをおこします。
顎の筋肉に力が入れば、歯ぎしり、食いしばりをしてしまうのです。
夜間低血糖に対応するには、低血糖にならないように補食を入れてあげるとよいのですが、寝ている間に数時間おきに補食をとることはできません。
それではどうしたらよいでしょう。
夜間低血糖に陥る人は、実は、日中も低血糖になっています。
日中の血糖コントロールがうまくいくと、夜間低血糖は起こりにくくなります。
つまり、夜間低血糖による歯の食いしばりを防ぐには、日中の血糖コントロールが重要なのです。
三食+補食をとる、
日中にお菓子や甘い飲み物をとらない、
コーヒーなどのカフェインを避ける、
小麦粉製品、乳製品をできるだけとらない
など、日中の食事に気を付けていただくと、夜間低血糖を防ぐことができます。
特に、夕方から夜間にかけてのコーヒーとスイーツはできるだけ避けた方がいいでしょう。
パンやパスタ、ラーメンにも注意が必要です。
これらの対処方法については、以前のコラムに詳しく説明していますので、参考になさってください。
歯ぎしり、食いしばりをしている人、歯科で歯のくさび状欠損を指摘された方は、日中、低血糖になっていないかどうかを確認して、対策を始めていただくとよいでしょう。
低血糖については、以前のコラムで解説しています。
「いつもだるくて、疲れている」のは低血糖が原因かもしれません
歯科定期検診
低血糖症状で悩んでおられる方にも、歯科定期検診をおすすめしています。
自分では気づかないうちに、睡眠中に歯ぎしり、食いしばりをしている可能性があるためです。
歯科を受診し、くさび状欠損を指摘され、マウスピースを勧められた場合は、ぜひ作ってみてください。
マウスピースを装着することで、歯をくさび状欠損から守ることができます。
くさび状欠損は初期の段階では自覚症状が少なく、発見が遅れてしまうケースも少なくなくありません。
早期発見するためには、歯科医院で検診を受けていただくことをお勧めします。
歯科の定期検診は、虫歯の予防、早期治療のためだけではないのです。
最近、あなたが歯科検診を受けられたのはいつのことでしょう。
もし、しばらくされておられないのであれば、ぜひ、検診の予定をいれてみてください。
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