クリニックを受診される方は、とてもまじめな人が多く、仕事も家事も完璧にやり遂げなければいけないと思っておられます。
診療でこのような方法を試してくださいとお伝えすると、すべて完璧にこなさなければいけないと考える方も少なくありません。
しかし、治療に対する完璧主義は、かえって症状を悪化させ、治療を長引かせます。
疲れていてもやらなければならないと焦ったり、ひとつでもできていないと症状が悪化するのでは…、と不安になり、ストレスを増やしてしまうのです。
「7~8割くらいできたらOK!」という気持ちで、はじめてください。
低血糖対策に完璧主義は厳禁
特に低血糖症の方は、注意が必要です。
低血糖対策を始めなければ、低血糖症から脱出できないのは確かなのですが、低血糖対策に必死になることが、かえって低血糖を悪化させてしまうのです。
「完璧にしなければ」「あれもこれもやらなければ」という思考や行動が、交感神経を刺激し、ストレスや過緊張をもたらします。
すると、低血糖に陥りやすくなってしまいます。
以前、このような方がいらっしゃいました。
「他院を受診して低血糖を指摘され、低血糖対策をいろいろ行っているのですが、いまだに朝は起きられないし、夜間低血糖で中途覚醒するしで、ちっともよくなりません」
と深く悩んでおられました。
話を聞いてみると、たしかに、完璧な低血糖対策です。
しかし、表情や言葉の端々に現れる必死さが、交感神経を優位にさせているのがみてとれ、この完璧主義こそが、うまくいかない原因なのではと感じました。
頑張っても頑張っても、良くならないので、さらに頑張ってしまい、さらに「よくならない~!なぜ?」という迷路にはまり込んでおられるようでした。
低血糖対策は完璧なので、これを7-8割程度として、ゆるくしてみましょう。
仕事も完璧主義で取り組んでおられるのでは?
と尋ねたところ、
「自分もそう感じていて、実は退職を考えている」
と言われます。
「低血糖対策をすこし緩めてみます。
それと、好きなこと、体を動かすことなど、やってみたいことがあるので始めてみます」
と言われました。
その後、徐々に緊張感は緩み、退職されてさらに症状は改善していったのです。
体調がよくなったときこそ、頑張りすぎに注意
治療をはじめて体調がよくなったら、持ち前の完璧主義には、さらに注意が必要です。
体調が回復すると、今までできなくて止まってしまっていた仕事や勉強を取り戻そうとされるのです。
そして、120%から200%のペースで仕事や勉強に取り組まれます。
このようなことをすると、早晩、ダウンしてしまいます。
これでは何のために治療してきたのかわかりません。
何度も、このようなことを繰り返すと、さらに治療が難しくなります。
症状が改善し、仕事や勉強を再開するときは、少しずつ始めるようにしてください。
休息の時間をしっかりとって、とにかく「焦らず、ゆっくり」といい聞かせましょう。
ご本人が頑張りすぎていると感じたら、ご家族や周りの方からも、ひとこと声をかけていただけるといいですね。
仕事復帰後は、可能でしたら、無理のない環境にしてもらうなど、会社になんらかの配慮をお願いしていただくのもいいと思います。
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